プロダクション

プロダクションマネージャー眞鍋萌さんに聞く
「広告業界がキラキラするために今必要なこと」

―― まずは自己紹介からお願いします。

眞鍋眞鍋萌と申します。
大学を卒業してから新卒でキラメキに入社し、
今4年目のプロダクションマネージャーになります。


普段やっている案件の内容としては、
弊社の特色にもなっているバイリンガルの制作。
つまり、海外の案件に携わっています。

仕事のやりがいは、人と接する事がすごく好きなので、撮影や、CMの完成までのゴールに向かって、
みんなで話し合いながら進めていけるという
プロセス自体もすごく好きで、やりがいを感じています。

―― 具体的なエピソードはありますか?

眞鍋1年目の時にチーフPMみたいな動きをしなきゃ
いけないときがあったんです。

一緒に制作していたチーフの人が体調を崩しちゃって、
その人の代わりにやることになったんですけど、

初めてでわからない事をスタッフに相談しながら、
とりあえず撮影にこぎつけました。

その撮影現場で、ふと周りを見渡して、
「すごい!私がこの人たちを集めて動かしてるんだ!」
と思って、
すごい感動しちゃって。


ふとした瞬間に
「私がその人たちとコミュニケーションとって
進めている」と実感できる事が、
この仕事で一番やりがいのあることじゃないかな
と思います。

―― 海外案件が多いということで、
日本のプロダクションと
海外のプロダクションで何が一番違いますか?

眞鍋お金の内容がすごくクリアだということと、
契約ベース、コントラクトベースで物事が進んでいく
ところだと思います。


プロダクションとかスタッフとのやり取りで、
仕事を進めるにあたり、そういった部分が
きっちり形式化されていて、
何にどれくらいかかるかがわかる。

ちゃんと働いている分はちゃんと取るよっていう
スタンスというのは、日本の場合だとグロスで
お願いしたいとか、他の仕事も含めてこの金額で
お願いしたいんですっていう相談が結構多いと
思うので、そこの違いを感じました。

―― つまり、しっかりかかった分は工数計算して
請求するっていう?

眞鍋そうですね。
人件費はなおさら一番しっかり取っている印象が
ありました。

―― PMとして働いて、「あれ、何かおかしいな?」
みたいに感じることはありますか。

眞鍋元々若干感じてた違和感でもあり、
海外撮影に行って余計に思ったことなのですが、
制作部という業種が、
下っ端で雑用みたいな
立ち位置であるかのような接し方をされている
印象を受けることが少なからずあります。


昔の状況がわからないので一概には言えませんが、
立場の上下関係みたいなものが少し残っている
ところがあるのかなと。


海外の現場では、みんな違う職種ですが
一緒に仕事してます、という雰囲気がありました。

だからすごく対等な、フェアな関係で
お互いに思ってることを言って。
監督とも互いに意見を言い合って、
すごくフェアに進められてるって感じがあったので、
パッと思いつくのはそこの部分です。

もちろん親身にこちら側の意見も聞いてくれて、
一緒に進めようっていう視線のスタッフの方々も
多くいらっしゃるんですけど。

―― 対エージェンシーとか対クライアント周りでは
何かありますか?

眞鍋対エージェンシークライアント周りに関しては
すごく恵まれてると思っています。

今、レギュラーで受けさせていただいてる案件が
いくつかあって、2〜3年以上ご一緒しているのもあり、

すごくこちらの状況も考慮して一緒にスケジュールや
予算を組んでくださる方が多くて、
そこで困っていることは逆にないかもしれないです。

―― 海外の場合って事前の合意した契約が
しっかりあるから、
もし諸事情でスケジュールが
ズレたりした場合は、どういう感じに
なるんですか?

眞鍋海外のプロダクションの方は、できる事はできる、
できない事はできませんという事をしっかり
言っている印象があります。

もちろんそれが合わない時にはプロダクションで
補える部分は補えるようにしつつ、
ただこういう状況ですという事を説明して、

進め方をクライアントとかエージェンシーに
ご相談するようにしています。

先程お話しした通り、 海外案件でよくお仕事している
クライアントの方はすごく理解のある方々なので、

海外がこう言いましたっていった時に、
じゃあこういうふうに進めていこうかって
別の考えを出してくださったりするっていう
進め方ができています。

―― 逆に眞鍋さんの上司のプロデューサーから
「いや何とかしてよ」みたいなことは
あったりするんですか。

眞鍋それはないですね。
プロデューサーたちはすごく頼りになり、
安心感があります。

もちろんちゃんとご説明をした上で、
クライアントとかエージェンシーに対して
しっかりできないことはできないですって言ってくれる
プロデューサーたちなんです。


なのでこちらもプロデューサーと
密にコミュニケーションを取るようにしています。
その分プロデューサーも、できるできないを
ちゃんと判断して、先方にお伝えすることができるので。

―― クライアントやエージェンシーに対して、
プロデューサーが「できない」って言うことは、
なかなか難しい部分があると
おもうんですけど、それがちゃんと
うまくいく秘訣はありますか。

眞鍋ちゃんと筋道の通った理由を述べた上で決断を
お話しできてるからっていうのはあると思います。


先方がすごく理解してくださっている姿勢も
あってこそ成立する状況だったと思いますが、
プロダクションでなぜそれができないのか、
別の案としてどういうことができるのかを
ちゃんと考えた上で相手に提案することで、
相手もその話を聞いてくれる。

じゃあ話し合おう、という状況を作ってくれる
っていうのはあります。
状況を細かく分析して、それを元にお伝えする
っていうのが秘訣の一つなのではと思います。

―― クライアントに対して、PMの立場から
こうしてほしいっていうことはありますか。

眞鍋まさに今の仕事のいいところだと思うんですけど、
状況を伝えたときに話を聞いてくださって、
話し合いができること。

一方的にやってくださいではなくて、
もう予算とスケジュールが確定しているので

その中でやってくださいと。

進んでいく中で、追加のお願いが増えるけど
この予算とスケジュールは変わりませんっていう方も
いる中で、
柔軟に対応してくださったり、
制作側に対しての理解がある事が
すごくありがたくて。

他のクライアントやエージェンシーの方々も、
制作側のことを考えてくださる方がもっと増えれば
いいのにな、と思います。

―― エージェンシーに対してはどうですか?

眞鍋私の印象だと、一緒に働いてるエージェンシーの方々
って結構長時間労働をしている印象を受けていて、

やっぱりお客さんが働いてて連絡とかしてると、
こちらも対応する必要が出てくるので、

そこが時々変わればいいのになって思う事の
一つではあります。

広告業界、改善はされてると思うんですけど、
やっぱり結局見えないところで動いてるというか。

この業界だからしょうがないっていう風潮が全体に
あるなと思ってて、でも実際にそれで続かない人たちが
存在してるのも確かなので。


もう少し持続可能的な働き方ができるように
なった方が、もっといろんな人が働こうって
思えるし、
そうする事でもっと面白いアイディアとか、
もっと面白いこともできるだろうなっていうのは
思うので、
そこがもったいないなっていう。

若い世代って、できないならもう辞めてしまう
みたいな。
他にできることとか好きなことが
あるはずだしっていうふうに割り切るタイプが
多いと思うので、
そうなるとこの環境だと
残らないよなっていうのはありますね。

ただ、残業がいいってわけじゃないんですけど、
日本のプロダクションのいいところの一つだな
っていう風に思うのは、ホスピタリティの精神は
海外に比べてあるんじゃないかなって
個人的には思ってて。


やっぱり海外はドライに金額決まってます、
時間も決まってます、これでできることをやりますっていうスタンスなので、

日本は少しでも良くするためにプラス1何か
できることがないかっていう姿勢を持っている方が
多いと思うので、そこがすごくいいなと思います。

だから良いところではあるのかなと思いつつ、
やっぱり弊害もありますよね。

―― スタッフの方々に求める事はありますか。

眞鍋全部において、お互いの立場の理解を深めた方が
いいというか。
最近スタッフの方も、
単価がちょっと上がってたりするんですよ。
時代が変わってるんでみたいな。

お客さんからは、この予算しかない。
スタッフからは、「いやでもうちらはもう今の時代
これぐらいの単価でやってます」と言われた時に、

はさみ打ちになってしまう事が
結構辛いところではあります。

なので、スタッフ側にも、こちらもちゃんと
その分の予算を確保できるように頑張るけど、
柔軟な姿勢で一緒に解決策を見つけるという
スタンスでいていただけたら嬉しいな
っていうのは時々思います。


板挟みになった時は、
とりあえず一度スタッフ側に交渉します。
交渉をしていて、「無理です」「いやでもこっちは、、」
っていうやり取りが精神的にちょっとつらい時が
ありますね。


あとは、新人制作部に教えてくれるスタッフが
増えたらいいなと思います。

制作部1年目の頃、そもそも何が分からないかも
分からない中、やっぱりそこで教えてくれる
スタッフの方が結構いました。
すごく感謝していますし、そういう方が増えてくれたら
業界全体として良くなるんじゃないかなと思います。

―― ありがとうございます。では最後の質問です。
広告業界をキラキラさせるためには
どんなことが必要だと思いますか。

眞鍋個人的に思うのは、カンヌとかに出せる作品を
作っていくことなんじゃないかなって思います。
世に出るその先があったほうがワクワクするし、
スタッフ全体のモチベーションも変わるのでは
と思っています。

今って、とりあえず目の前にある仕事を
やっていくっていう状況なのかな、と思ってて。
やっぱり忙しいからもうそれだけで精一杯で、
そもそも出そうと思うその意思がないんじゃないかな
って思ってて。


無邪気だから考えられることかもしれないです。
取ったら楽しいじゃん!っていう。
色々がんじがらめになって取るのも違うと思うので。

―― 辞めたいなとか、辛いなって思ってる
PMに対して、エールの言葉はありますか。

眞鍋これは私の考え方なのですが、

自分は結構前向き思考で、そもそも根底に
映像制作がすごく好きっていうのがあるので、
まずそこに目を向けるようにする。

いろんな仕事をしていて、辛いことや大変なことは
あると思うんですね。
だからそういう時に、楽しさを見つけ出すとか、
楽しいなって思うようにする。
そっちに目を向けるっていう姿勢が
大事なんじゃないかなっていう風に思います。

でももちろん休むことも大事だし、
逆に、できない、ちょっともう無理だって思ったら、
「今すごくしんどいんです」っていうのを、
ちゃんと上司とかに話すっていうのも
大事だと思います。

自分だけで抱え込んでやめちゃう子とかもいて、
それがすごくもったいなく感じます。

ちゃんと話せば聞いてくれるはずで、
じゃあ次はちょっとゆっくりできる案件へとか、
ちょっとタイミングずらそうか、という相談が
できると思うので、ヘルプを出すっていうのも
合わせて大事かなと思います。


やっぱりどうしても大変な仕事ではあると思うので、
常に前は向いてられない。
だからそういう時に、そういう気持ちを同期でも、
後輩でも、周りに共有して、彼らの力を借りる
という事は大切なのかなと思います。

―― 眞鍋さん、ありがとうございました。

眞鍋 萌(まなべ もえ)

株式会社キラメキ/プロダクションマネージャー
1998年東京生まれ大阪育ち。幼い頃から映画が好きで映像制作に興味を持ち、2021年にキラメキに入社。撮影現場、試写での笑いに溢れた何気ない会話をする瞬間が好きです。週末は映画館を梯子しています。

  • 聞き手/株式会社KEY pro
    CEO/プロデューサー
    城殿 裕樹
  • 記事公開日/2024.10.1
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