
プロダクションマネージャー 佐々木麻里さんに聞く、
「広告業界がキラキラするために今、必要なこと」
異なる立場、役割の相手に思いやりを持つこと
―― まずは自己紹介からお願いします。
佐々木電通クリエイティブピクチャーズの佐々木麻里です。
入社9年目のプロダクションマネージャーです。
TVCMを中心とした広告制作を担当しています。
―― この仕事を選んだ理由を教えてください。
佐々木CMが好きだからです。
そのことに気付いたきっかけは、
人よりもCMのことを覚えていたり、
友達や家族に熱く語っていたり、
ふと見た電車の中の広告に励まされたり、
そんな些細な日常の一場面からでした。
30秒、15秒の限られた尺の中で伝えられる想い。
その想いを伝えるためのコピー(言葉)がだいすきで、
それが生まれる瞬間、形になる現場に
携わりたいと思ったことをきっかけに、
この業界を目指すことを決めました。
―― 私もCMにおけるコピー(言葉)は
とても重要だと考えていますが、
そんな佐々木さんの好きなCMのコピーを
教えてもらえますか。
佐々木「もう一度、人生をもらえるとしたら、
二十歳の時に病気であきらめたサッカー選手を
目指すだろう。
でも、もう一度監督をやる必要は無い。
なぜなら…この人生で、私は全てを出しきるからだ。」
KIRIN FIRE 心に火を。
このシリーズが好きで、その中でも当時
部活に打ち込んでいた私にとっては、
やり直す必要がないと言い切れるくらいに
全てを出し切ると宣言する姿がすごくカッコ良くて、
羨ましく感じたことを鮮明に覚えています。
―― では、PMの仕事でやりがいを感じる場面は
どんな時ですか?
具体的なエピソードもあれば
あわせてお願いします。
佐々木プロダクションマネージャーでなければ
出逢えないような、プロフェッショナルな人と
仕事ができるという点です。
例えば、フラワーアーティストや凧揚げのプロ、
風を起こしたり湯気を出したり
様々な演出の手助けをしてくれる仕掛け屋さん、
編集に効果音をつけるSE屋さんなどなど、
一般企業に勤めていたら、決して出逢えないような
業界・職種の方と手を取り合って、
一緒に作品をつくることができるんですよね。
人が好きな自分自身にとっては、
とてもやりがいを感じる場面です。
―― 一番思い出に残っている仕事は何ですか?
佐々木7500本を超える生花を用意したことです。
美術部、造園部、フラワーアーティストさんの
アイデアを集結させて、スタジオに
花畑をつくることを実現させました。
CGに頼らずにリアルな生花で描きたいという
監督の想いを、スタッフが一丸となって
形にした瞬間でした。
限られた予算の中で、カメラに対する見せ方、
花畑の設計、造園部とフラワーアーティストの
役割分担、植える時も高さの違いを利用した
魅せ方の工夫、各部署の経験と
アイデアの詰まった思い出の作品になりました!
―― 広告制作において、働いていておかしいな?
と思うことはありますか?
佐々木働いても働いても仕事が終わらないことです(笑)。
制作の仕事はあらゆるリスクを
事前に回避するために常に先回り、先回りして
考えなくてはいけないので、
仕事が全然なくならないです。
考えれば考えるほど仕事が湧き出てきます。
ただ、時間を無限に費やせるわけでもないので、
弊社であれば22時までの限られた時間の中で
考え抜くことの難しさはあるものの、
考えれば考えた分だけ
忘れられない仕事になるので、
そこはこの業界で働く面白さでもある気がします。
―― 仕事が終わりそうもない時は
どうしていますか?
佐々木仲間たちを頼っています。
撮影に向けて技術的な部分で困っている時は、
スタッフに連絡をして納得いくまで話し合ったり、
仕事量で困った時は、チームの後輩や
先輩と仕事を手分けすることで
切り抜けるようにしていますね。
―― 広告主・広告会社・スタッフの方々に
求めることは何かありますか?
佐々木自分たち以外の会社、立場、役割の人たちに対して
思いやりをもつこと。
(広告主の方々へ)
抱えている問題の解決や商品が売れるように
導くようなコミュニケーションを行うために、
欲張り過ぎないことが大切だなと
感じることがあります。
15秒という短い尺の中で、視聴者に伝えたいことを
詰め込み過ぎると1番伝えたい事が希薄になります。
CD、プランナーの皆さんが考えた企画や、
監督、カメラマンなどの現場スタッフが考えた構成や
アングルなど、各部署からのアイデアを受け入れる
想いやりを持って頂けると嬉しいです。
(広告会社の方々へ)
広告主の想いに応えることと、
実際の制作過程に入ったときに発生する
予算や撮影日程などの制約のバランスを考えた
企画を考えることは、とても苦労の多いことだと
思います。
制作会社やスタッフに完成イメージを
共有して下さる際に、抽象的な表現ではなく、
具体的な完成イメージを共有して頂けると、
より精度が上がると感じることが時々あります。
(スタッフの方々へ)
監督を中心としながらも各部署からの
アイデアに耳を傾け、一緒に検討することが
大切だと思います。
そして作品を通してクライアントが伝えたいことに
対して、自分たちの経験値から最大限の
パフォーマンスで応えることが求められます。
それぞれ立場や役割が異なるので
譲れない部分も異なり、
時にぶつかることもありますが、
そこで一度立ち止まって考えられるかどうかが
大切だと想っています。
自分以外の立場や目線になれるかどうか。
広告主、広告会社、制作会社、スタッフ。
全員が1つの映像をつくる仲間だと思っているので、
自分の知識や経験を感情で語らず、
思いやりをもって伝え合うことを
心がけてもらいたいです(笑)。
―― 制作進行において大切にしている
ポイントがあれば教えてください。
佐々木先程の質問への回答に似てしまいますが、
スタッフに対して思いやりをもつこと、
誰に対しても誠心誠意向き合うことを
大切にしています。
この仕事は誰かを想うことを忘れてしまうと、
チームの結束力も最終的な作品のクオリティも
担保できない結果になってしまう気がするので、
この気持ちはこれからも忘れずにいたいです。
―― 広告業界をキラキラさせるために必要なことは
なんだと思いますか?
佐々木初心を忘れないことだと思います。
どんなに経験を積んで知識が増えていったとしても
驕ることなく、楽しむという熱量を持ち続けることが
必要だと考えています。
熱量を常に高くするためには、
仕事をただの作業として捉えて取り組むのではなく、
何故その行動が必要なのか、自分がそのチームや
場面で求められている意味を考えて楽しむことが
必要なのではないかと思います。
―― 最後に。
このインタビューを読んでいる
業界の方にむけてメッセージをお願いします。
佐々木この業界で働く人たちは若いなあ〜と
感じることが多いです。
それはもしかしたら服装や
髪色のせいかもしれませんが(笑)。
でも、きっと、様々な業界・分野の最前線を
常に学び続けているからだと思っています。
出逢う人数、関わる業界も他のどの業界にも
負けないくらい多いと思うので、
自分自身の人間力を磨き続けることができると
思います。
同じ毎日の繰り返しではない分、
1つの案件や現場に対しての緊張感や不安は大きく、
その変化していく環境・新たな出逢いの中で
成長していくことが常に求められます。
言葉だけ聞くと大変な印象になる
かもしれませんが、一人で戦うことはありません。
仲間同士で支え合い、励まし合い、
一緒に乗り越えた時の達成感や経験は
この仕事でしか味わえないと思います。
「映像制作に携わりたい!」「CMが好き!」
「この監督に憧れて!」「芸能人に会いたい!」
「仲間と何かを作り上げるのが好き!」。
この業界を目指すきっかけは
人それぞれだと思いますが、
ただどんなきっかけであっても、
そこに自分なりの想いがあれば、頑張る理由が
自分の中に見つけられれば、
ずっと走り続けられる仕事だと思っています。
―― 佐々木さん、ありがとうございました。

株式会社電通クリエイティブピクチャーズ/プロダクションマネージャー
1994年新潟生まれ。お米だいすき。
幼い頃から身体を動かすことがだいすきで、スポーツに打ち込んできました。
自分では何事にも全力で前向きに取り組むことが取り柄だと思っています。
- 聞き手/株式会社電通クリエイティブピクチャーズ
グループ長/プロデューサー
町川 大介 - 写真/株式会社電通クリエイティブピクチャーズ
部長/プロデューサー
高橋 伸也 - 記事公開日/2024.6.2