制作スタッフ

ディレクター 金野恵利香さんに聞く
「広告業界がキラキラするために今必要なこと」

金野 恵利香(こんの えりか)

株式会社TYO WHOAREYOU ディレクター
1989年青森県八戸市生まれ。 東京藝術大学 美術学部 先端芸術表現学科卒業。 2013年TYO入社。受賞歴に「ADFEST Fabulous Four」最優秀賞、「ADFEST」FILM CRAFT部門 silver、「D&AD」Yellow Pencil など。

自分が企画演出したという証を残したい

―― まずは自己紹介からお願いします。

金野ディレクターの金野恵利香です。
2013年にTYOに入社し、入社当初は、企画演出部(クリエイティブセンター)という部署に所属していて、プランナーとしてスタートしました。
現在はCMディレクターとして活動しています。
元々、映像や広告に魅力を感じていたので、CMディレクターになることを志望してTYOに入社しました。

―― 当時の広告業界は、どういう風に見えていましたか。

金野 とにかく、派手だなっていう印象で、制作に相応の予算がかかっていると感じました。 豪華な映像を制作できる夢にもつながり、憧れを感じました。

―― 金野さんの今のやりがいは何ですか。

金野自分が手がけたCMが商品の売上に貢献したり、テレビで自分の作品が流れていたりするのを見ると嬉しいです。

―― ディレクターとして一番好きな作品のテイストは何ですか。

金野自分が好きなテイスト……難しいですね。でも、カッコいいCMや意表を突くアイデアに富んだオチのあるCM、それとほっこり系のショートムービーっぽい映像も好きです。

―― 仕事に取り組む時、意識していることはありますか。

金野 他のディレクターと同じような演出にならないように心がけていて、自分が企画演出したっていう証をしっかり残したいと思っています。 ディレクターになりたての頃は、受けた仕事をベストで返すことしかできていなかったし、正直、前向きな気持ちで取り組めない仕事もありました。

そういった中で、演出でジャンプさせていいよっていう案件があって、「これだけ演出で変えられるんだ」っていう経験をしてから徐々に、自分がやりたいテイストを演出するCMに上手くねじ込められるようになってきました。

―― クリエイティブスタッフやプロデューサー、クライアントとの関係値は大事だと思いますか。

金野 重要だと思います。 良好な関係性がないと、仕事がうまく進まないこともありますし。 最近は、クライアントからの修正でそんなに滅茶苦茶なことを言われた記憶があまりなくて、修正内容をベースにもっと良いものを作ろうっていう前向きなマインドになっています。 自分自身、大人になっていますね。

―― 若い時は尖っていたんですか。

金野 そうですね、ムッとする時はありました。 最近は、ちゃんと意図を理解して柔軟に対応しています。

今は、一緒に仕事をする人とのコミュニケーションが円滑で、演出側への発注が的確だったり、企画がしっかり見えて演出しやすかったり、尊敬できるクリエイティブの方とご一緒するとすごいなって思います。

プロダクションであれば、ちょっとした気遣いとか、良いCMを作りたいっていう気概が垣間見られた時に、自分も頑張ろうっていう気持ちになります。 自分がいろいろと経験をして成長できて、周りの状況が見えてきたから、そう思えるのかもしれません。 言いにくいことも言えるようになってきましたし、経験なのかもしれないです。

制限の中で良いものを作る楽しさ

―― 広告業界で今、おかしいなと思う瞬間はありますか。

金野 あまりないかもしれませんね。 正確には、考えたことがないかもしれません。 入社当初は演出に携わっていたわけではなくて、主に企画の提案ばかりしていました。 自分の好みではない方向性や真面目なCMの企画も手がけましたが、将来このまま、何も変わらないのではないかという不安もありました。 もしかすると、今の若い人たちも同じような悩みを抱えているかもしれません。

―― 先が見えない状況ですね。そんな時、どのように過ごされていましたか。

金野 修行だと割り切って、社内外の人に名前を覚えてもらえるようにメイキングムービーや社内向けムービーを積極的に作っていました。 仕事には全力を尽くしましたが、先が見えない不安もありました。 それでも頑張れたのは、いつかディレクターになれるという希望があったからですね。

―― 下積み時代から大切にしていることはありますか。

金野 どのプロジェクトでも、自分が実現してみたい企画を入れていくことです。 最初は理解されなくても、いつか自分のテイストや好み、性格などに誰かが気づいてくれるチャンスが訪れるので、そこまで継続することが大切だと思います。

私の先輩ディレクターに演出の依頼があったのですが、スケジュールの都合がつかない案件がありました。 その時のプロデューサーが別件での私の企画が通ったのを覚えてくれていて、ピンチヒッター的に私に声がかかりました。 そのプロジェクトで受賞できたことがきっかけで、徐々にディレクターとしての仕事が増えていきました。 なので、チャンスはいつか来るということは信じています。 そこまで、続けるマインドというか。

―― これまでの仕事で記憶に残っているものを教えてください。

金野 一番ハードだった現場は、アジア太平洋広告祭「ADFEST」で開催される若手ディレクター向けの脚本・映像コンペティション「Fabulous Four」で最優秀賞を受賞した映像制作です。 まず撮影が大変でしたし、普段なら企画があって演出でジャンプさせるところを、企画脚本から考えなければいけなかったので、それが一番大変だった記憶があります。

―― CMとショートムービー、演出家としてどちらが好きですか。

金野 広告のほうが面白いですね。 クライアント、広告会社がいて、その制限の中で良いものを作るっていう楽しさはあります。 また、こんなにも変わったのかっていうくらい企画をジャンプさせられた時の嬉しさもありますし。 いろいろな選択肢がある中で考えついたという実感がありますし、いろいろな人たちが協力してくれることで強いチーム感を味わえるからですかね。

私が考える、
「広告業界をキラキラさせるために、今必要なこと」

―― 金野さんが思う「広告業界をキラキラさせるために、今必要なこと」を教えてください。

金野 もっと垣根がなくなると良いのかなって思います。 最近、広告会社が介在しないクライアント直案件を担当しました。 そのプロジェクトでは、クライアント側にクリエイティブスタッフがいて、質問に対してすぐに返答がありましたし、ダイレクトなコミュニケーションがすごく楽で、やりやすいなって感じました。

広告会社を介する仕事の場合、そこでゴチャッとなって、不要な手間が増えたりすることがあるので、もう少しフラットな関係性になれば良いなと思っています。 一方、広告会社がクライアントとの仲介役としてクッションになってくれている場面もあるので、どっちが良いんだろうという感じです。

―― プロダクションに対して期待することはありますか。

金野 もっと若いプロデューサーが増えても良いのかなと思います。 他社のプロダクションの案件で、ときどき若いプロデューサーが関わっていて、のびのびと働いているのを見ていると、良いなって思います。

その子は27歳で、年上のプロデューサーも一緒にいるんですけど、現場はその子に任されていて、自分の意見を述べたり、自分で判断したりして、楽しそうに働いている姿が印象的でした。

若い人がどんどん活躍していると、夢があるなって思います。 プロデューサーへの長い道のりは、若い人がすぐ辞めてしまう理由の一因にもなっているかもしれません。 役職や権限を早く与える方が若い子は辞めないような気もします。

―― 広告業界全体で考えるといかがでしょうか。

金野今は、私が入社した頃と比べて広告業界の魅力や価値観が変わっている気がします。

誰でも映像が作れる時代ですけど、プロフェッショナルがチームを組んで映像を作ることはまた別の話だと考えています。 そういうCM制作の良さに気づいてくれる人がもっと増えるには、ポカリスエットやカロリーメイトみたいなブランドムービーが増えればいいのかもしれませんね。

個人的には、CMを諦めたくないという気持ちがあります。 学生時代、インスタレーションのような映像を作っていたんですが、美術館は割と来る人が限られているので、いろいろな人に見てもらえるCMっていいなと思います。

―― 最後に、ディレクターをめざす学生にメッセージをお願いします。

金野 経験すればするほど、たとえイヤなことがあっても、それが逆に自分も気をつけなきゃいけないことだと気づけたりします。 イヤなことがあっても時間は過ぎるので、頑張ってほしいです。

―― 金野さん、ありがとうございました!

  • 聞き手/株式会社 TYO
    Corporate Officer/Executive Producer
    石川 竜大
  • 記事公開日/2024.2.1
みんなの声一覧に戻る