プロダクション

プロデューサー佐土原奨平さんに聞く
「広告業界がキラキラするために今必要なこと」

楽しい広告を作っているか

―― 自己紹介からお願いします。

佐土原TYO driveの佐土原奨平と申します。
2022年にプロデューサーになって4年になります。

―― 仕事のどんな部分にやりがいを
感じていますか。

佐土原作った動画が世に出た時の反響を見たり
聞いたりしたときに感じますね。
良い反響、悪いコメント色々あるんですけど、
自分の中では精一杯やり尽くした結果なので、
反応があると無事に完パケて良かったなと、
やって良かったなと思います。
全くの無風が一番切ないかもです。

―― PM時代と比べて、変化とかはありますか?

佐土原PMの時は、とにかくいろんな制作スタッフと
1を10にするという作業が楽しくて、
各部門のプロフェッショナルを巻き込んで、
必死に完パケに向かって行くそのプロセス自体に
やりがいを感じていた部分があります。
オンエアを見たら、もうすごい鼻が高かったですね笑。

そのときに比べると、広告主や広告会社、
そして見てくれた視聴者に向けての意識に
シフトしたので、だいぶ変わったと思います。

―― 何かきっかけがあったのですか?

佐土原広告主や広告会社の方々とコミュニケーションを
とることが増えてからだと思います。

当然ですけど動画を作ったら終わりではなく、
商品やサービスを買ってもらうために、
この動画をどう届けるか、
投稿文は?
オンエア時期は?どのメディアなの?
考えることが、みなさん本当にたくさんある。

それを経て流れた動画は視聴者にどう届くのか。
すごく意識するように変わりました。

―― こだわっていることはありますか?

佐土原常にフラットに、スピードを持って。
何より映像愛を持って考えるようにしています。
フラットにとは、自己的になっていないか
という意味です。
予算がない、理不尽な要求がある、
焼き回しな表現でオリジナリティがない、
スタッフ頼み。などなど。


自分の手元にボールが来たときに
諸条件ありますが、自分の手元に来たからには、
どう形にするのが最適解なのか
やりたいことの中心はどこにあるのかを
平たく考えるようにしてます。


どうしたら面白くなるのかの中心を
自分なりに考えた後で、
予算や問い・企画内容に対するアンサーを
考えています。


その方が納得感・説得力も高まると思うんです。
それをスピードを持ってやる。
遅いと状況が変わってることがほとんどなので。

映像愛は言わずもがなですね。
趣味が映像制作なので、
正直、来たボールは全部蹴りたい。
ゴールしたいというのが本音です笑。
本当に映像が好きなんで、
その愛こそがこだわりポイントということで。

―― 広告制作において、働いていておかしいな?
と思うことはありますか?

佐土原業界あるある。
本当によく言われていることですが、
土日や祝日、連休明け提案は無くならないですね。

知り合いの監督に、お盆前のタイミングで
演出コンテ発注をしたんです。
そしたら、彼が
「俺にも先祖がいるし、お盆はちゃんと
お盆をしたいんですけど。」
その通りだなと思いました。

仕事したい人はすればいいんですけど、
前提として休める環境って整備しておかないと。
おかしいですよね。

厳しい要求や短納期、プレ前の徹夜作業など
依然として常態化しやすい環境ですし、
これは誰か1人がどうにかすれば良い問題
ではないので。

当事者意識のある”働き方改革”だと
取り組む企業も増えてるような気がしますが、
とりわけ、他社・他者のこととなると
急に関心がなくなる。

構造的な問題の解決には至っていないのが
現状だなと思います。

―― どうしたらいいと思いますか。

佐土原このインタビューを受けると聞いたときに、
他のみなさんの声を拝見させていただきました。
大変失礼ながら、このお話を受けるまで、
取り組み自体を知らなかったです。

ですが、一人一人、立場の違う人たちの御言葉に
すでに、その答えがあったと感じました。

僕らは、受発注の縦割りの関係という
枠組みだけにとらわれず、
いい広告を作っていくための
パートナーであると。
お互いがお互いの立場にリスペクトを持って、
協業していくべきチームだと思いました。

この思想が浸透すればおかしいと思うことの
半分くらいは解消されるんじゃないですかね。
すでに結論は出てる気がしましたね。

また、ギークピクチュアズの早坂さんが
おっしゃってましたが、映像制作においての、
広告主・広告会社・プロダクション・
制作スタッフ
の間で価値観の違いからくる
ズレってのもすごい納得あるアンサーだなと思いました。
どのセクションでも予算があって
できることが大体決まってる。
正直、昔はプロダクションたちが、
採算度外視でいいものを作ったもの勝ち
みたいな風潮があったと思います。

今はどうなのかわからないですが笑

これもまたビジネスだよ。
と言われたらおしまいですが、
そういうことをやってるようでは、
おかしい。の根本解決は無理だろうな
と思います。

―― 広告主や広告会社、プロダクション、
制作スタッフ、それぞれに求めることを
お聞きしてます。

佐土原もっと、広告を楽しんで欲しいと思います。
リスクヘッジって大事だと思うのですが、
アレもダメ・これも怖い・それは言ってほしくない。
で、どんどん平たい広告になっていくのは、
広告主にとっても嬉しくないことだと思います。

平たい広告だから毒にも薬にもならなくて、
見たくない。
見たくもないから広告は嫌いになるし、
嫌われてるから担い手が増えていかない。
担い手が増えないから、衰退していく。
悪循環です。

チャレンジを誰も馬鹿にはしないと思いますし、
そういうのを世の中のせいにしているのは、
僕ら広告業界の人間かなと思うんです。
なんでも言語化しないといけないとか、
視覚化しないといけないみたいなのって、
かなり視聴者を馬鹿にしていると思うんです。


こういう広告作っとけば、売れるでしょ的な。
見透かされてると思います。
TikTokとか見ている若者のコメントとか見てると、
本当に細部まで気づいたりするんですよね。
面白い。
視聴者を馬鹿になんてできないです。

世の中には、チャレンジングで尖ったり・
インパクトを持った広告を作っているクリエイターは
たくさんいると思うので、
身近な人を楽しませられる広告を
一緒に作っていきたいです。

日本向けだけじゃなくて
世界に向けて発信するつもりで作って
いいんじゃないですかね。
広告賞とか見ててもこんなんありかよ笑
みたいなの本当にいっぱいあるし、
もっと広い視座で戦っていいんじゃないかなと。

楽しい広告が増えることが
一番大事なことだと信じてますので、
各ポジションで一度立ち止まって、
「俺、楽しい広告作ってるっけ」って考えたいです。

―― これから広告業界に新たに入ってくる若者に
魅力を感じてもらうために必要なことは
何だと思いますか。

佐土原やはり楽しい広告をどれだけ作っていくか
だと思います。
自分がこの会社に入社したとき、
あの広告を見て、いいなと思って
それを作ってる人たちと働きたい。

というのがあったので。
魅力を感じてもらうためには、
まず自分たちが魅力的である必要がありますね。

プロダクションだけがそういう動きをしても
意味がなくて、パートナーである広告主・広告会社・
制作スタッフの全てが大きい傘の下で
同じ方向を見て、後進を迎え入れてあげるのが
大事だと思いました。

―― 広告業界をキラキラさせるために必要なことは
なんだと思いますか?

佐土原同じことばっかり言ってるかもしれないんですが
広告を楽しいものにする以外に、
自分たちの業界をキラキラさせる手段って
ないんじゃないかと思います。

プロデューサーとしては、
楽しい広告を作っていければ、
そのうち芽が…出るんですかね。笑

40代とかになって、道半ばで方向転換とか
普通にあり得そうでちょっと怖いですね。
でも、そんなことを言ってると若者もこないし
業界もキラキラしないと思うので、
前だけ向いてがむしゃらに頑張りたいですね。

―― ありがとうございました。

佐土原 奨平(さどはら しょうへい)

株式会社 TYO / TYO drive / Producer
1990年兵庫県生まれ。
2021年プロデューサー。
日本コカ•コーラ社、アース製薬、JCB、USJ、THE FIRST TAKEなどを担当。
2025年 1月10日より映画『Welcome Back』公開
受賞歴 ACC地域賞「しろえび紀行」

  • 聞き手/株式会社 TYO
    Corporate Officer/Executive Producer
    石川 竜大
  • 記事公開日/2025.10.1
みんなの声一覧に戻る