制作スタッフ

映像ディレクター金川慎一郎さんに聞く
「広告業界がキラキラするために今必要なこと」

各部署のボスがとにかく現場を
楽しくしようと心掛ける

―― まず金川さんの自己紹介をお願いします。

金川はい、映像ディレクターの金川慎一郎です。
短編映画を撮ったり、今年は舞台の作・演出なども
予定していますが、基本的にコマーシャルの演出を
生業にしています。

―― この業界を目指すきっかけを
教えてもらえますか?

金川父がグラフィックデザイナーで
家にADC年鑑とTCC年鑑がありました。
そんな環境の中、中学生の時に
誕生日プレゼントで佐藤雅彦全仕事を貰って。

代理店のCMプランナーになりたいなと
ずっと思ってました。
それがきっかけですね。

―― 中学生で佐藤雅彦さん、すごいっすねw。
次の質問でこの仕事のやりがいって
何だと思いますか?

金川やっぱり自分の作ったもので、人が驚いたり、
笑ったり、世の中が反応することです。
それが一番面白いと思ってます。

自分が知っている人はもちろん、
知らない人も面白いって言ってくれたり、
Xで反応してくれていたり、、、
そういったところが魅力だと思います。

―― そうですよね。ありがとうございます。
次の質問で広告制作とか広告業界において、
何かおかしいな、
もしくは何かおかしくなって
きたなって思うことってありますか?

金川僕も含めてクリエイティブに携わる方々の立場が
ちょっと弱くなってきている気はします。

クリエイティブチームの真っ当な意見が
クライアントに通らない時がある、
っていうのは昔と変わってきている感じはします。

―― そうかもしれませんね。鋭いですね。
今お話しいただいたのはおかしくなってきた
話だと思うんですけど
元々これおかしいんじゃないかなと
思うことって何かあったりしますか?

金川今のお話と微妙に逆行するところもあるんですが
やっぱり広告主がお金を払ってくれるんだから、

広告主が目指してる目標に対して
ものを作るべきだなと思ってました。

どこから歪んだかはわからないですが
賞を取るために映像を作るとか、
面白くなくてもいいものを面白くしようとするとか、

商品力があるのにストーリーで語ろうとするとか、
クライアントが思っているこういうものを作りたい!

っていう気持ちをたくさんの人が介在することで
濁しているのではないか、
というのは
ずっと思っています。

―― なるほどー。
ありがとうございます
じゃちょっと次の質問行きますね。

クライアントに求めることはなんですか?

金川さっきの話に繋がるんですけど
クライアントの要望と違うものを出していた過去が
そうさせているのかな?とも思うんですが、、、、


また変なことしようとしてませんか?
って感じで信頼されていない状況に出くわすんです。

なので、おこがましいんですが
もっと信頼してほしいなと思います。
嘘つかないのでw

―― 繋がってますねw
では広告会社に求めることはどうですか?

金川僕が広告会社に何か求めるのも恐縮ですが、、、
強いて言えば、やっぱり信頼をしてもらうために、
嘘はつかない方がいいんじゃないかなって思います。

ビジネスだから致し方ないことは
いっぱいある前提で。

そう思ったのは自分のお金で
インスタに広告を出した時に、
(大したお金じゃないんですけど)
この「広告」でなんとか売れて欲しい!
って強く思ったんです。

でも、同時にその気持ちに対して真面目に、
正直に答えてくれていないような人がいたら
どう思うかなって思ったんですよね。

やっぱり信頼できないなと思ったわけですよ。

―― なるほど、
発注側に立ってみると変わりますよね。

金川クライアントのために
本当のことを言ってあげるっていうのが
やっぱり重要なんじゃないかなと。

もちろんそういうきちんとしている
広告会社の人はいっぱいいると思いますが。

―― そうかもしれませんね
続いてなんですけど、
プロダクションに求めることは何ですかね。

金川一人でもいいからスタッフの味方を
入れて欲しいですね。

僕の印象論でしかないけど、
昔は、プロデューサーとPMっていうのが
立場がしっかり分かれていて、

PMっていうのはスタッフの意見を集約してくれる、
僕らスタッフのまとめ役だった。
はっきり言うと一番の味方でした。

だからスタッフの意見を聞かずに
プロデューサーがこう言っているから
こうしてくれっていうのは
なんか違和感あります。

―― あー、確かに変わってきているかもですね。
気づきありますね。
それではスタッフに関して求めるものって
ありますか。

金川それぞれ皆さんプロフェッショナルの知恵を
出して欲しいというのはありますが、
やっぱり正直な話をして欲しいというか。


例えば僕がこうした方がいいんじゃないか
って言ったらそれは
「あんま良くないんじゃないか」
って
意見を言ってくれる人と
一緒にやりたいですね。

―― いい話ですね、テーマは正直ですね。
何か心が洗われますw

最後になるんですけど、
もっとこの広告業界が魅力的になるとか、
キラキラしてるように見えるためには
何をどうしたらいいのかって意見あったら
聞かせてもらえますか?

金川去年、ハリウッドの映画が日本で撮影をしていて、
知り合いのスタッフに誘われて
現場を見に行ったんですよ。

ハリウッド俳優が来ていて、
映画会社もハリウッドの映画会社で。

この現場を見た時に各部署のボスが
とにかく現場を楽しくしようと心掛けているんですよ。
話聞いたら、かなり撮りこぼしていて、
やばい状態だったらしいんですが。

各部署のリーダーの人達が
関係ない無駄話を差し込んだり、
誰かがミスった時に突っ込んだりして、

盛り上げていこうっていう気持ちがすごくあって、
それがびっくりしたんです。

日本の映画だと静かに真面目に撮るのが
なんか美徳みたいになってるけど、、、、
その現場は遊んでいるような感じだけど、
いいもの撮っているというか、、、

僕とかゲストがいても
凄いちゃんと対応してくれるんですよ。
撮影中だけど、椅子用意してくれたり、
食べ物出してくれたり、他のゲストも
ひっきりなしに来るんだけど、

みんなきちんともてなしてるんですよね。

スタッフの家族や子供とかも来ていて、
普通は押しているから構っている時間ないと
思うんだけど子供の席作って座らせて
楽しませてって感じで。

状況がやばくてうまく行っていないのに、
暗くしないように。

本当はどう思っているかわからないけど、
楽しくしよう!しなきゃいけない!っていうのを
責任として持っている感じがしたんですよね。
現場が楽しかったって思わせて終わらせなきゃ
ダメだろうっていう気持ちで回してるというかw

そう言う気持ちを各部署のリーダーたちが持てば
変わるんじゃないかなと思いました。
自分はどうなのかって言ったら全然できてないから
僕のスタッフには申しわけない!って感じですがw

―― うわー。めちゃめちゃいい話ですね。
背筋が伸びる思いがしました。

本日はありがとうございました。

金川 慎一郎(かながわ しんいちろう)

WHITECO. 所属
コマーシャルフィルムを中心に活躍し、ACC賞など数々の賞を受賞。
2023年短編映画「冬子の夏」を監督し、女子高校生の心の機微を細やかに演出。
「サンフランシスコ国際短編映画祭」グランプリなど映画界でも評価を受けている。

TVCM: PERSOL doda/アフラック/P&Gファブリーズ/明治R-1/SUZUKIスペーシア/KIRIN氷結/ヤマサ/マクドナルド/ソフトバンク

  • 聞き手/株式会社博報堂プロダクツ
    プロデューサー
    金子 裕
  • 記事公開日/2025.2.3
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